江戸城拡張の際、神田橋外の茅商人を動かして開かれたという茅場町は、江戸期に酒問屋の町として栄えました。またこの地は江戸時代の儒学者、荻生体が私塾、けんえん塾を開いた地としても知られています。最近では兜町と隣接していることから金融関係のオフィスが集まり、ビジネス街独特の活気とエネルギーに満ちた街並が広がっています。
茅場町高木ビルは、この茅場町の日本橋川のほとりに建築された地下1階、地上7階のオフィスビルです。ワンフロア約380坪、天井高2.7メートルという、ゆったりとしたスペースは、快適なオフィスライフを演出しています。
このビルはオフィス部の窓側が川に沿っているというポイントから、設計が始まっています。本来ビルの奥側に集まるコア部分を道路側に形よく配置し、ビルとしてのデザインをいかに洗練されたものにするか。また貸しビルという性格上、いかに効率良くレンタルできる空間を切り取るかという、難しい課題を見事にクリアしています。
「ビルを設計する場合、デザイン性を重視した建築法というのもありますが、今回の茅場町高木ビルは、貸しビルという性格上、貸しスペースの機能性を最優先することが、設計上のポイントになるわけです。
立地条件から、川側に窓を配置し、エントランスを含めたコア部分を手前の道路側にもってくると、必然的に道路側にアンバランスな窓ができてしまいます。そこで、ビルの壁面をダークに仕上げて窓を目立たなくするというようなデザイン先行ではなく、必要性からデザインが決まっていくという方法をとらなければいけなかったのです」(東京ビル企画(株)佐下橋功統括部長)
とはいえ、1階のエントランスホールは川面から陽射しと水の揺らぎが映り、スタイリッシュな中にも明るさと温かさのあるオフィスの顔を演出しています。2階以上のオフィス部は380坪という広さにもかかわらず、見通しのよい無柱空間を実現。
建物に作用する地震力を吸収するY字型制震プレースを各階に配置し、耐震性能の向上を図り、基準値を上廻る強度を生み出しています。床面はOAフロアを採用し、天井もシステム天井にすることで、シャープで機能的なオフィス作りに一役かっています。
ここ数年来いわれているオフィスビルの選定条件に「近・新・大」とありますが、新しく、広いということに加え、地下鉄「茅場町駅」から徒歩4分というアクセスのよい立地は、この茅場町高木ビルのオフィスとしての魅力をさらに大きなものにしています。
ビル1階部分には機械式と自走式、合わせて36台の駐車スペースが設けられています。機械式駐車設備の選定にあたっては、過去の納入実績を評価していただき、平面往復方式「CSパーキング」が採用されました。
駐車場の附置義務をクリアし、貸しスペースとしての効率のよさを考慮した上で、いかに限られた空間に駐車設備をレイアウトするかが課題でした。
日精の平面往復方式「CSパーキング」は、その特徴である省スペース、大量収容、迅速な入出庫、低コストといった利点に加え、設計の自由度の高い製品のフレキシブルさで、今回もお客様の個別の条件にフィットする製品を納入させていただきました。
「都内のビルには駐車場の附置義務があるので、どうしても駐車場を作らなければいけません。先ほどもお話したように、効率よく貸しスペースをとって、さらにその範囲で駐車場を低コストで作るというのは、設計者にとって大変頭の痛い問題です。
日精さんはこちらの出す条件に、細かく、すぐに対応していただけるので、とても助かりました」(前出:佐下橋氏)
都内のオフィス街では「狭い立地」条件の下、いかに効率よく駐車スペースを確保するか、また、いかにコストを抑え、ビルの特徴に対応した駐車場を設置するか、ということが大きな課題となっています。そのため、既製の機械式駐車設備が設置しにくい立地でも、個別に対応できる日精の駐車設備への期待は、これからさらに高まってくるでしょう。
乗込階平面図
乗込口の閉口時
乗込口の開口時