日本最初の学生街としてにぎわい、東京のカルチェラタンともいわれたお茶の水、神保町界隈。現在も大学や専門学校、大小の書店、古書店、出版社がひしめき合い、訪れた人を学生気分に引き戻し、急に知的好奇心が膨らみ出す、不思議なパワーを持った街です。
旧昭和ビルが建ったのは昭和34年。街には今とひと味違った、学生の熱気が溢れていました。歴史ある学生街の建物も徐々に老朽化が進み、建て替えを余儀なくされてきています。このような流れの中で、昭和ビルが平成13年5月に建て替えられました。
新しい昭和ビルは地上10階、地下2階で、2〜8階のオフィスフロアに加え、9〜10階はメゾネットスタイルの住宅、1階部には店舗スペースが設けられています。オフィスフロアは天井までの高さを2.7メートルに設定、ゆとりのある空間が快適なオフィス作りに一役買っています。
人口の少ない千代田区の付置義務住宅にあたる9・10階は一戸当たりの貸室面積が約85メートルと広めな1LDK。この住居部へは、オフィスビルとは別のロビーと専用エレベーターが用意されています。
オフィスの顔となる1階玄関ホールは二層吹き抜け。縦に長い空間は格調を生み出すと同時に、2階のエレベーターロビーに立つ人と、ビルの1階にいる人がお互いに顔の見える、親しみやすさのある空間を生み出しています。
ビルの外装は周囲の街並みに威圧感を与えることなく、しかもスタイリッシュで格調を保つという難しいテーマに、壁面をガラスとチャコールグレーのアルミ正方形グリッドで構成することにより、見事にこの難問をクリアしています。
そのため、10階建てという周囲の建物よりかなり高いビルにもかかわらず押し付けがましさがなく、街並みに溶け込んでいます。またビルの外周に設けられた歩道部分に植えられた樹木が、この一角に一服の清涼剤のような優しい空間をつくり出しています。
このビルはまた、バリアフリー、省エネルギー、防犯、防災という今日的な課題にも十分対応できる設備、機能を備えています。一例として、西側の車寄せピロティーに設けられた身障者用駐車スペースが挙げられます。外部からは、この部分と住宅入り口からのフラットアクセスが可能となっています。また、震度機能は震度5程度の地震にあっても建物にはほとんど損傷なく、震度7でも人命が損なわれるような倒壊には至らないという強度を持っています。
このビルの設計は、(株)日建設計が担当されていますが、西側に設置された駐車設備の入出庫口部なども側面をガラス張りにし、外観を損ねることのないデザイン性が保たれています。
更に、この部分の天井高は3メートルの高さを確保。雨の日でも、商品を濡らすことなく搬入できるようになっています。機械式駐車設備の選定にあたっては、特に建物立地が都心であり、慢性的な駐車場不足の解消と土地の有効活用といった視点から機種選択がおこなわれました。
その結果、駐車場のレイアウト、空間の有効活用、工期、コストなどの要素が検討されたうえで、複数のメーカーの中から、当社の平面往復方式「CSパーキング」が採用されました。もちろん、「CSパーキング」の特徴である省スペース、大量収容、迅速な入出庫、低コストといった利点が大きく評価されたポイントとなっています。
更に、このビルの建主である(株)小学館では、これまでも当社の駐車設備を採用いただいております。こうしたリピートは、日精の技術力や信頼性のみならず、提供する製品の品質、導入後のアフターサービスを含めたトータルサポートの品質の高さに評価をいただいたものと確信しております。
今回はこうした実績と収容台数36台を確保しながら、コンパクト性に優れた日の技術力に高い評価をいただいたと同時に、導入されたお客様の満足度の高さを示す事例といえます。
乗込階平面図(1階)
乗込口の閉口時
乗込口の開口時
入出庫口のターンテーブル