商都・大阪の副都心である新大阪地区に誕生した『カルピス大阪ビル』は、地上7階、地下1階、塔屋1階で、昨年7月に竣工しました。1階はエントランスロビー、打ち合わせコーナー、車庫、サービスヤード、2階には大会議室と食堂、3階から7階までは事務室として使用されています。
「初恋の味」で知られる「カルピス」は、創業者の三島海雲氏が内モンゴルで出会った酸乳から着想を得て生まれたもので、1919年7月7日に発売されました。
七夕にちなんで天の川の群星をデザインしたといわれる白地に青の水玉模様の包装紙、朝顔の花のように縁が広がったグラスといったおなじみのイメージは、ビル東西の両壁面の乳白色地に青のストライプのタイル、空とのラインに表情をつける最上階の軒先の広がったデザインにも反映されています。
このように、ビルの外観は清涼感あふれる商品イメージを共有し、街並みへの新たな印象を創出するため、幅員30メートルの幹線道路に面する南側はガラスカーテンウォールを採用しました。
これには「カルピス」の透明感を連想させる低反射ガラスが採用され、側面の乳白色のタイルとの対比によって、開かれた明るい企業イメージと清潔感のある印象的なデザインを鮮明にしています。
また、敷地の周辺には未開発の空地が残っているため、設計にあたっては今後の街区整備との関係も考慮されています。実際には、当ビルの南側では隣接する建物との関係から、壁面線や建物高を揃え、ピロティを設けることで、歩道空間と協調して開放的な空間を提供しています。今回の計画では、『環境への配慮』の考え方が積極的にとり入れられました。
自然エネルギーの有効活用との視点から、自然排気口を兼ねた換気欄間を設け、中間期の外気が風の流れを作り出す構成や、窓の高さを足元まで下げることで自然採光面を広げると同時に、人体に優しい高遮熱低反射の複層ガラスを用いることで、執務環境の向上も配慮さています。更に、ガラス廃材やリサイル材の活用、ケナフ壁紙などの環境負荷低減材料の採用、人感センサー照明や高効率機器の導入で、企業文化(アフォード)を具現化しています。
また、南側と東側にそれぞれ11メートル、7メートルの奥行きを持つ事務室は、前面100ミリメートルのOAフロアと天井高さ2.7メートルとゆとりあるボリュームを持ち、働く場所として快適で質の高いビジネス空間となっており、将来のビジネススイルの変化や情報系を中心とする設備の付加更新にも配慮した、柔軟性の高い空間であるのが特徴です。
駐車設備の計画では、関西地区の営業拠点として、より多くの営業用車両の導線処理とスペースの確保がテーマとなりました。幸い、同ビルの敷地が有効利用に適した長方形の整地だったことと、北側にも幅員6メートルの道路があることで、2方向からの人とクルマの導線が設計段階から考慮されました。
カルピス大阪ビルでも必然的に営業上のフットワークが求められます。こうしたことから、パーキングシステムもただ単に『クルマが止められれば良い』というものではなく、入出庫時間の短縮、管理のしやすさなどが大きなポイントとなりました。
この要求に応えたのが、日精のエレベータ方式(フォーク式)駐車設備『ELパーキング』です。カルピス大阪ビルのように入出庫頻度の高い場所では、入出庫の回転効率が高い機械式駐車設備として『ELパーキング』が最適です。
同ビルではこの『ELパーキング』を2基併設し、合計52台の収容能力を誇っています。更に、駐車設備の入出庫状況がパソコンで管理できる『入出庫状況管理システム』が導入され、駐車場の稼動状況が管理事務所のパソコンでオンタイムに確認できる等、営業活動の効率化を図るのに一役買っています。
この『ELパーキング』はもともと省スペースと大量格納をに優れており、その基本コンセプトに加えて、フォーク式〉では『よりスピーディに』をモットーに、エレベータリフトや横行台車の動きからロスタイムを徹底して排除し、入出庫時間を短縮しています。また安全性、騒音、振動にも配慮した設計で、従来機種との部品共通化をはかることで、低コスト化を実現しています(「カルピス」「初恋の味」はカルピス社の商標登録です)。
乗込階平面図(1階)
乗込口の閉口時
乗込口の開口時
ELパーキング内部構造図