「日本ではよく容積率ギリギリまで目一杯建てて、床面積を増やし、それで建設コストとの採算を合わせようとするでしょう。しかし、それじゃあいけないんです。要は、商品力をどう持たせるかということ。ビル自体に魅力があって10年も20年も愛されるのでなければ、結局は造っても意味がない。だから企画力の勝負で、それが収益性につながることが重要なんです」
仕事で頻繁に海外を訪れ、年間に4万マイル飛び回ることも珍しくないというオーナーの鳥屋部さんは、技術畑のご出身とのこと。また、国内ばかりか東南アジアやバンクーバーなど海外にもビルを多く建設・所有してきたお立場でもあり、さらにその外国では、現地銀行とも直に渡り合ってきた程の辣腕の鳥屋部さんです。
「シャンブル・プレイス1」の建築からも、そうしたオーナー自身のワールドワイドな見識やポリシーが建物を通じてはっきりと伝わってきます。オーナーと設計施工者の双方にとって思い出深い、有意義な仕事となったようです。
外観は「洒落たオフィスビル」という印象ですが、用途の中心は意外にもオフィスではなく寮。ビルの大半を専有し、120室を擁しています。つまり「寮らしく見えない寮をつくる」ことが、当初からの設計の基本コンセプトというわけです。
そうしたオーナーのセンスはビルの随所に細やかに発揮され、その結果、寮特有の生活臭を一切感じさせない、しかも住みやすい、職住を共存させた新世代型のビルが誕生しました。また将来を的確に見据え、それに向けて商品力を重視した点でも、このビルは今後のビル開発における一つの方向性を示唆しているものといえるでしょう。
オーナーのポリシーは駐車場にも見事反映されました。エントランスは全体にホテルのイメージで細部に渡り美しくデザインされ、その地下に25台分、シーマクラス(中型車)対応型の機械式駐車設備が設置されました。
機種は、空間効率と取り出し時間を考慮して選択された多層循環(円形)方式。しかも、それは当初の希望案であったターンテーブル内蔵型のリフトがレイアウトの都合で出来なくなったことを逆に転じて、そのマイナス材料を意匠に取り込み設計するというあざやかな発想の転換で、機能・デザイン共に優れた駐車場が実現しました。
乗込階平面図
AUROパーク
乗込口の開口時