東京で最もオシャレな街、銀座。ここの多くのビルと同じように歴史を重ね、再構築のサイクルを迎えた読売広告社本社ビルが、新しい姿となって昨年8月に竣工しました。新本社ビルは地上9階地下2階で、業務フロアに加え、ロビー応接・会議室、プレゼンテーションルーム、インタビュールーム等を配置したほか、コミュニケーション企業のオフィスビルを象徴する施設として、最上階にホールを設置しました。
このコムホールと名づけられた200名収容のホールは、社内発表会や社内セミナーの会場として、その活用が図られています。
街並みに威圧的な印象を与えない、透明感のあるピュアなデザインをコンセプトにしたこの新社屋は、外壁全面にガラスカーテンウォールを採用し、軽やかな構造を印象づけています。「銀座中央通りに面する1、2階部分はピロティとすることで一丁目交差点に「界隈空間」を創出させています。
3階以上には2層吹き抜けのアトリウムが設けられ、銀座の街とオフィスの「相互鑑賞空間」として、ビル全体に解放感を与えています。オフィスに働く人々が外の銀座の息吹きを感じ、銀座を訪れた人々がオフィス内のアクティブな動きを感じ取ることができる「対話性」を尊重したエレメントの導入は、地域社会の一員としての新しいオフィスビルのあり方を具現化しています。また、銀座の夜の表情にも彩りを添えるよう、照明のレイアウトも配慮がなされています。
ピロティ部には光床が仕込まれ、アトリウムにはアッパーライト照明が組み込まれて、光のドラマを演出しています。さらに、環境という今日的な課題に対しても様々な手法を用いての工夫がなされています。外壁ガラスには太陽熱の約58%をカットするLOW-eペアガラス(遮熱複層ガラス)を採用することで、「省エネルギー」「透明性」「全面ガラス窓による快適性」という三つの要素を実現しました。
また、空調には深夜電力を利用して作り出した氷でビルを冷房する「氷蓄熱方式」を採用したほか、高性能な脱気装置を組み込み、配管寿命を飛躍的に高める設計になっています。「年々激しさを増す都市部の廃熱とコンクリート幅射熱によるヒートアイランド対策としては、空中庭園を設け、屋上の緑化を図って対応しています。
こうした同ビルの設計コンセプトが評価され、1・2階のテナントには世的な宝飾ブランドとして有名な「ハリーウィンストン社」が入居し、地域活性化の新しい担い手として注目を集めています。
地下1階には会議室、データセンターのほか、大型乗用車14台を収容できる駐車場が設けられています。
今回の新社屋の設計では、当初から既存の地下躯体の一部を利用する計画がありました。昭和30年代に建てられた旧本社ビル建て替えにあわせ、既存の地下外壁を山留壁として利用することで、工期の短縮とコストの圧縮を図ることが目的でした。
既存の地下外壁という与えられた器の中に、いかに機械式駐車設備を納めるかが、駐車設備を設計するうえで、最大のポイントとなりました。
「何社もの機械式駐車設備を検討しましたが、物理的に導入が可能なのは日精のSPパークだけでした。」(日本設計本社設計室米澤彰子氏)
「当社ではこの「SPパーク」を設計上の要求に合わせて改良し、サイズをフィットさせるなどの技術面での迅速な対応を行い、「既存の地下外壁を利用」という当初からのリクエスト通りに、駐車設備を完成させることが出来ました。この地下躯体の一部を利用する計画に対応したことで、ビル全体の工期を約18ヵ月という短期間で納め、さらに大幅なスト圧縮も実現するという初期の目標達成に、大きく貢献することが出来ました。まさに日精の技術力が評価された事例といえます。
また、1階の入出庫スペースは、ロビー部分を広く取りたいという要求に応えるため、壁面を曲面処理するなどの創意工夫がくり返されました。これはオフィスの顔でもあるビル1階のロビーに曲線の柔らかいフォルムを生み出すとことに一役かっています。
こうした限られたスペースでの機械式駐車設備の設置に関する技術的な対応力は、これからの新しいビル建設、旧いビルのリニューアル上のテーマとして、これまで以上に重要な意味を持ってくることと確信します。
この読売広告社新本社ビルの導入事例のように、既存の躯体を活かしながら、よりスピーディーな施工を可能にしたいといった機械式駐車設備に対する様々なリクエストに応え、設計の自由度を提供できる日精の技術は、今後ますます注目されるでしょう。
乗込階平面図(1階)
乗込口の閉口時
乗込口の開口時